何度も何度もテレビで見ていたヴィクトル。
知っている日本の選手なんかよりも、いつだってヴィクトルの姿に釘付だった。

 

なんで、あんなに綺麗なんだろう。
なんで、あんな風に滑れるのだろう。
なんで、あんな風に飛べるんだろう。

 

本当に、妖精みたいだ・・・。

 

あの人といつか、同じリンクで滑りたい。
そう願いながらずっと、ずっと見つめ続けてた。

 

その彼が、日本の大会に出ると聞いて、母さんに無理にお願いをして、僕も応援に会場に来た。
試合前のリンクでは、何人もの選手が練習で滑っている。
だけど、その中ですぐに見つけることができる。
ヴィクトルの姿なら、すぐにわかる。

僕は手にしたスマホでなんとかヴィクトルを撮ろうとしたけれど、何度やっても上手く撮れない。
僕だけの綺麗なヴィクトルの姿を、せめてこの中でだけでも留めておきたいのに。

僕が諦めかけて会場から離れようとした時、ちょうどリンクから戻って来たヴィクトルが目の前に現れた。

目の前のヴィクトルは、テレビなんかで見るよりも、ずっとずっと綺麗で、思わずポカンと見上げてしまった。

 

『ん?どうかしたのかな?』

 

ぼ、僕に、ヴィクトルが何か話しかけてる?
でも、ヴィクトルの存在にいっぱいいっぱいの僕には、ヴィクトルが何を言ってるのか、よくわからなくて。
だから、僕から言ってみたんだ。

 

『し、写真、撮ってください。』

 

あまりに綺麗で、目を見て話せない僕に、ヴィクトルは優しく答えてくれた。

 

『記念写真?いいよ。』

 

これが僕の初めてのヴィクトルとの記念写真。
今でも、画像のデータはとってある。

 

『勇利、何を見てる?』

 

休憩中の僕の隣に座ったヴィクトルが、僕のスマホを覗き込む。

 

『あれ〜?これは・・・』
『む、昔、一度だけ・・・撮ってもらったんだ・・・』

 

きっとヴィクトルは覚えていないだろうけど。

 

『前に日本の大会に来た時かな』
『うん・・・』
『あの頃は怖いもの無しだったなぁ・・・』
『今は、怖いものなんてあるんですか?』

 

懐かしそうに語るヴィクトルは、今だって十分に美しく、力強い、神様みたいな存在で・・・今でも僕の憧れ。

 

『怖いもの?あるさ・・・』

 

そう言って僕の顎に手をふれて、自分のほうに顔を向けさせた。

 

『勇利、きみを失うことが、一番怖いよ。』

 

軽く唇にふれて、優しく微笑んだ。
は、反則だよ。ヴィクトル。

僕の心臓は止まりそうになった。

 

-Fin-

 

 

いよいよ明日は、今年最初の国際大会。
明日のために、ずっとヴィクトルと一緒に練習の日々だった。

 

「今日は早めに休んで、明日のためにゆっくり休むんだよ。」

 

そう言って、ベッドに入った僕の頭を軽く撫で、部屋を出て行こうとするヴィクトルに、思わず声をかけてしまう。

 

「ヴィクトル・・・」
「どうした?・・・不安なのかい?」

 

僕の瞳に不安を見て取ったのか、ヴィクトルが僕のそばに戻ってきて、ベッドに腰を下ろした。

 

「ん?」

「・・・添い寝して?」

 

自然と口にしていた。
いつもなら、恥ずかしくてジタバタしてしまうのに、今日の僕は、少し違った。
どうしてもヴィクトルにそばにいて欲しかった。
そんな僕に呆れるかと思ったのに、ヴィクトルは優しく微笑んで、僕の頭を撫でてくれた。

 

「仕方ないな・・・今日は甘やかしてあげるよ。子豚ちゃん。」

 

明日は、ヴィクトルに最高の演技を見せたい。
ヴィクトルの温もりに抱きしめられながら、僕はようやく眠りについた。

 

-Fin-

「ふぅ・・・・」

 

ヴィクトルから言われたことを考えながら氷上に立つ。
冷気がジワジワと上がってくる中、頭の中を、ヴィクトルに教わった振り付けをイメージする。

 

"ユーリ!君なら大丈夫!"

 

そう、ヴィクトルの言葉は信じられる。
たとえ、自分自身を信じられなくても、ヴィクトルの言葉だったら。
ヴィクトルが見ていてくれるなら、あなたのためになら滑れるはすだ。
目を閉じて、何度も何度も、ヴィクトルの言葉を反芻して、僕の心の中に浸みこませようとした。

 

「ユーリ」

 

急に冷たく大きな掌が、僕の頬を包む。
驚いて目を開くと、いつの間にかヴィクトルの柔らかな微笑みが目の前にあった。

 

「やっとこっち向いた…」
「……っ!!?」

 

コツンと額がぶつかる。
美しい瞳に覗き込まれた僕は、まるで魂を吸い取られたみたいに、ただ、固まるしかない。

 

「君なら大丈夫。」

 

ヴィクトルの低い優しい声とともに、柔らかな唇が、僕の唇を掠めていった。

 

「っ!?」

 

「さぁ、練習を始めるよ〜!」

 

いつも通りのヴィクトルの声に、僕は我にかえる。

 

「は、はいっ!」

 

顔を真っ赤にさせながら、僕は勢いよく氷上を滑り出した。

 

-Fin-

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